美容室の経営から撤退する場合「廃業」をイメージされる方は多いはずです。
最近は廃業を選ばずに事業譲渡・売却「M&A」という選択肢を選ぶオーナーも増えています。M&Aは美容室には関係ないのでは?と思われるかもしれません。
今回は美容室のM&Aについてメリット・デメリットや事例などをご紹介します。
目次
そもそもM&Aとは?
M&Aは「企業・事業の合併や買収(Mergers and Acquisitions)」の総称です。2つ以上の会社が1つになったり、ある会社がほかの会社を買ったりすることを指しています。
M&Aには下記のようなメリットがあるため、廃業ではなくM&Aを選択肢の1つとして選ぶ経営者が増えているのです。
- 事業継承などの後継者問題の解決
- 従業員の雇用の安定
- 投資回収(資金回収)を行うためのイグジット(EXIT)目的
美容室のM&A動向
市場規模はわずかに減少傾向にあるのが今の美容室の状態です。事業者数自体は増加傾向にあり、従業員数自体も増えています。
離職率が高いといわれる美容業界ですが、最近では競争激化のなかで差別化を図る美容室も登場してきており、付加価値をつけることが必要であることが分ってきています。
美容室のM&Aのメリット・デメリットは?
美容室がM&Aをおこなうことはさまざまなメリットとデメリットが発生します。
売却側のM&Aのメリット
メリット
- 居抜きやスケルトン売却よりも高額で売却しやすい
- 雇用を維持できる
- 大手企業の傘下で事業を拡大できる
- まとまった金額の資金を得られる
デメリット
- 値下げ交渉が難しい
- 希望価格設定がしづらい
- 雇用の維持ができない(辞められてしまう)
買収側のM&Aのメリット
メリット
- 効率的な事業拡大や経営多角化が可能
- 人材を獲得できる
デメリット
- スタッフとのコミュニケーションをしっかりとる必要がある
- ハンドリングが難しい
美容室のM&Aの相場は?
地域によって価格も大きく変化しますが、平均・相場はどの程度なのでしょうか?
売却額に相場はありませんが、平均すると700~1,000万円程度といわれています。居抜き物件の場合には300~600万円といわれますので、居抜き物件よりも高額です。
理由としては、M&Aの場合は美容師やアシスタント等の従業員をそのまま引き継ぐから。美容室自体の店舗数・知名度・今後の業績の見通しなどによっても売却額は変化します。条件によっては数千万という売却額になることもあるでしょう。
赤字経営の場合には売却額より差し引かれ、思っている以上の値が付かないこともあります。
美容室の実際のM&Aを紹介!
国内美容大手「Aguグループ」が2018年に香港系投資ファンド「CLSAキャピタルパートナーズ」の売却されています。M&A売却価格はおよそ100億円といわれています。
Aguグループは「Agu hair Salon」のブランドで全国展開する美容室チェーンで、M&A実施前には271店舗(2018年2月末現在)を運営していました。
CLSAキャピタルパートナーズは今後も積極的な出店で収益を増やしていくと発表しておりますので、これからも店舗の拡大が行われるでしょう。
美容室のM&Aをする際のポイント・注意点
メリットの多いM&Aですが、慎重に進める必要があります。
思っていたほどの金額で売却ができなかったり、時間が思った以上にかかってしまい、その間に経営が悪化してしまうなどということもあるので注意が必要です。
譲渡先は数字やデータなどによる裏付けを一番必要とするので、しっかりとしたデータを準備しておく必要があります。M&Aの場合には従業員を含めた交渉となりますので、従業員の扱いに関しても大切な交渉ポイントになるでしょう。
まとめ
近年様々な業界でM&Aが活発になっており、美容業界も同様にM&A事例が増えています。
美容業界は今後さらに競争の激化の可能性が高く、同業者同士のM&Aによって事業の強化・拡大・競争力の強化を繋げるケースが増加していくでしょう。
M&Aを検討する場合、失敗リスクも高いため注意をする必要があり、専門家などのサポートを受けながらM&Aを行うべきです。
経営を続けることによって生じるさまざまな問題を解決するためにもM&Aを理解してすすめるようにしましょう。