【保存版】美容室を開業するさいに必要な開業届の提出方法を徹底解説

個人事業をはじめるときに必要といわれる開業届。
美容室を開業するときにも該当しています。ただ、開業届といわれても、それがどのようなものなのか、用意するのが大変なのではないか、どうしても出さないといけないものなのかと思う人もいるでしょう。

そこで今回は、開業届の提出方法や作成のポイント、提出する時期などについて徹底解説いたします。

開業届とは?出さないことはできる?

独立して美容室を開業するときに、提出するようにいわれるのが「開業届」です。そもそも、開業届とは何なのか、開業届は必ず出さないといけないものなのかについて解説します。

美容室の開業届とは?

開業届とは「個人事業の開業・廃業等届出書」のこと。
この書類は個人で事業をはじめるときに税務署に提出するものです。ちなみに廃業するときにも提出します。
事業の例としては「ラーメンを中心とした飲食店の経営」「パソコン教室の運営」「カイロプラクティック」などさまざまで、「美容室の経営」もそのひとつです。

個人事業主は、1年間の所得を計算して、その結果から所得税を納めることになります。所得税や消費税は国税として担当の税務署に納税します。

開業届を提出することは、所轄の税務当局に開業することと税金を支払っていくことを届け出ることを示しています。

美容室の開業届を出さなかったときに生じるデメリット

開業届の提出は義務とされています。とはいえ、開業届を提出しなかったとしても罰則などはありません。しかしながら、届を出さないことでデメリットも生じます。

美容室の開業届を出さないデメリットは、青色申告ができない、クレジットカードが作りにくくなる、屋号での銀行口座の開設ができない、などが挙げられます。

青色申告ができない

まずは青色申告ができない点。青色申告で確定申告すると、控除や経費で節税ができます。
具体的には、10万円または65万円の特別控除が受けられること、家族や親族への給与を経費として計上できることなどです。

青色申告の特別控除では、1年間の所得から10万円か65万円のいずれかを引いた額で税金の計算をしてもらえることになります。所得から10万円か65万円を引いてもらえるとなると、支払う所得税額も減ることになって事業主の負担は減ります。

ちなみに2つの控除額の違いは、記帳の方法によって異なります。単式簿記では10万円、複式簿記では65万円となります。
また、家族や親族への給与分が経費として支払える点も青色申告のメリットです。家族や親族への給与は青色事業専従者給与と呼ばれ、これを経費にすることが節税につながります。

青色申告ができないとこれらのメリットを活かすことができなくなるため、開業届を出すことをおすすめします。

クレジットカードを作りにくい

美容室の開業届を出していないと一部のクレジットカードが作りにくくなります。個人事業主は安定した給与があるという証明をすることが難しいためです。しかし、開業届を出していれば審査が通ったり、法人用のクレジットカードが作れたりします。

法人用のクレジットカードを持つことには、いくつかのメリットがあります。
例えば業務上の経費を法人用のクレジットカードにまとめることで、経費の計上業務が楽になります。またクレジットカードの後払いシステムを利用すれば支払いまでに猶予が発生します。

また法人用クレジットカード独自の付帯サービスを受けることもできます。付帯サービスには個人向けのクレジットカードと同様ポイントが付くものもあれば、法人用のクレジットカード特有の付帯サービスがあることもあります。クレジットカード会社やカードのランクによっても異なりますが、国内の空港ラウンジを利用できる、海外旅行傷害保険がついているなどです。

屋号での銀行口座が開設できない

屋号での銀行口座開設は必要ないと感じる人もいるでしょう。しかし、個人用の通帳と事業用の通帳を完全に区別することによって、確定申告がスムーズにできるというメリットがあります。

美容室の開業届を提出する際の必要書類

美容室の開業届を提出するときには必要な書類がいくつかあります。それぞれについてご紹介します。

個人事業の開業届出・廃業届出書

美容室の開業届を提出するときに最も大切な書類が「個人事業の開業届出・廃業届出書」です。この書類が開業届と呼ばれている書類で、市区町村の役所や管轄の税務署で手に入れることができます。また、国税庁のHPからダウンロードすることも可能です。

国税庁HP 個人事業主の開業届出(ダウンロードページ)

美容室の個人事業の開業届出・廃業届出書の書き方

・タイトル欄
まずはタイトル部分の個人事業の開業・廃業届出書の開業の部分に丸をしてください。

・宛名
所轄の税務署長を宛先とします。所轄がわからない場合は国税庁のWebサイトで確認してください。

・提出日
次に提出日を記入します。実際に提出しようとする日付を記入します。

・納税地
納税地の欄には住所地、居住地、事業所地の3つのチェック欄があります。住所地は現住所、居住地は住民票とは別の場所に住んでいる場合の住所、そして事業所地は美容室の住所です。自宅で開業する場合は住所地にチェックを入れて住所を書きます。

住所地以外の場所に美容室を開きそこに住むのであれば居住地にチェック、美容室のみテナントなどで開業するときは事業所地にチェックしその住所を書きます。次の欄は上記以外の住所が無ければ空欄にします。

・氏名、生年月日
氏名はフリガナを忘れずに、生年月日も記入してください。

・個人番号
次は個人番号です。こちらはいわゆるマイナンバーです。マイナンバーカードや個人番号通知カードを確認しながら12桁の番号を記入します。どちらもない場合はマイナンバーの記載がある住民票を用意してください。

・職業欄
職業欄は美容師やスタイリストです。

・屋号
屋号は店舗名です。フリガナも忘れずに記入しましょう。

届出区分
下の枠内、届出の区分は「開業」にチェック。「所得の種類」の欄は「事業(農業)所得」を〇で囲みます。

・開業・廃業等日
その次の「開業・廃業等日」は提出日ではなく、開業日を記入します。開業日は語呂合わせにしたり、覚えやすい日にしたりすると周年イベントを開催するなどお店を盛り上げてくれるポイントになります。

・青色申告承認申請書又は青色申告の取りやめ届出書
「青色申告承認申請書」又は「青色申告の取りやめ届出書」の欄には「有」にチェックを入れます。
それと同時に青色申告書承認申請書を提出しましょう。

・給与等の支払い状況欄
1人で美容室を開業する場合、給与等の支払い状況欄の記入は必要ありません。従業員がいる場合のみ、従業員数や給与の定め方(「時給」「日給」「月給」のいずれか)を記載します。また税額の有無の欄は、給与から税金を天引き(源泉徴収)するかどうかについてチェックを入れます。

・関与税理士の記入欄
関与してくれる税理士さんが決まっている場合は記入してください。決まっていない場合は未記入でも問題ありません。

個人番号が分かるもの

個人番号とはマイナンバーのことです。個人番号がわかる、マイナンバーカードや個人番号通知カードが必要です。
またマイナンバーカードの取得がまだで通知カードを紛失してしまっている場合などは、個人番号記載の住民票を用意しましょう。

本人確認書類

マイナンバーカードを提出する場合、こちらは不要です。
個人番号通知カードや住民票を提出する場合は、運転免許証やパスポート、在留カード、公的医療保険の被保険者証、身体障害者手帳などが必要です。

青色申告承認申請書

開業届を出すのと同時に提出しておいた方がいいのが「青色申告承認申請書」です。
国税庁のHPからダウンロード可能です。

国税庁HP 所得税の青色申告承認申請手続(ダウンロードページ)

その他必要な書類

その他必要な書類としては「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」「青色専従者給与に関する届出書」「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」「給与支払事務所開設届出書」などがあります。
しかし、これらは提出の必要がある人は限られます。

「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」

所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書は、事業所の引っ越しなどにより、納税地が変わる場合に提出する書類です。

「青色専従者給与に関する届出書」

青色事業専従者給与に関する届出書は、青色申告で確定申告をしている人が、配偶者や親族に対して支払った給与を経費扱いで計上するときに提出する書類です。

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書は、源泉所得税の納期の特例を受けるために必要な書類です。
納期の特例を受けると、源泉所得税の納付手続きを行う回数を減らすことができます。
具体的には、年12回の源泉所得税納付手続きを年2回にまで減らすことが可能になるのです。

納付手続きの回数を減らすことで、事務手続きの手間を省くことができます。
しかし、この特例を利用するには条件があります。それは給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者であることです。従業員数が10人未満であれば、この特例を利用することが可能です。

「給与支払事務所開設届出書」

給与支払事務所等の開設届出書は従業員を雇うときに提出する書類です。

美容室の開業届を提出する時期は?

開業届は開業してから1ヶ月以内の提出が義務づけられています。
ただし、この時期をすぎてしまっても届を出すことができなくなるわけではありません。開業から1ヶ月を目標に、時期などを見計らいながら、開業届を提出してください。

開業届を出す時期については、避けたほうがいい時期や注意をしたほうがいい時期などがあります。
まず避けたほうがいい時期ですが、これは毎年2月16日から3月15日の税務署が混む期間です。この期間は確定申告のために税務署を訪れる人が多く、手続きに時間がかかってしまうため避けることをおすすめします。
また、年末までに開業、年が明けてから提出というパターンも注意が必要です。例えば2020年の間に事業所得があった場合、2020年中に開業届を出し、青色申告の申込みをしておく方がメリットがあります。なぜなら65万円の控除を受けることができるからです。2021年に持ち越ししてしまうと、2020年分の事業所得には青色申告特別控除が適応されないので気をつけましょう。

美容室の開業届を提出するときの注意点

美容室の開業届を提出するときには注意してほしいポイントがいくつかあります。それらをご紹介します。

開業届の控えは必ずとっておく

美容室の開業届を提出するときには、「控え」を作成し受付印を貰っておくようにしてください。
開業届は税務署に提出する書類です。控えの書類を用意していない場合、提出後手元に残る開業届はなくなってしまいます。この控えは融資を受けるときや、屋号付きの銀行口座開設時に必要になることがあります。

美容室の開業届を郵送するときも控えを用意する

美容室の開業届を郵送で提出するが可能です。
必要書類をすべて同封して切手を貼り所轄の税務署に郵送すればいいだけです。その場合も控えは必要です。控えを返送してもらうために、開業届を提出用と控え用の2部用意してください。控えを返信してもらいたい旨を示したうえで、切手を貼った返信用封筒を同封してください。

返信用封筒の同封を忘れてしまうと控えを受け取ることはできなくなります。この場合、開業届が必要なら税務署に「保有個人情報開示請求書」を出して写しを発行してもらう手続きをおこなう必要があります。これを控えとして示しましょう。

美容室の開業届をオンラインで提出するときは余裕をもって準備する

美容室の開業届はオンラインでも提出することが可能です。
そのときに利用するのが、確定申告などで利用するe-Taxです。e-Taxを利用するにはマイナンバーカードやICカードリーダライタが必要になります。

特にマイナンバーカードは、現在発効までに1~2ヶ月以上かかる自治体も少なくありません。いざ開業届を出そうというタイミングではすぐに準備できるとは限らないので、余裕をもって事前準備をおこなうようにしてください。

まとめ

美容室を開業するさいに必要な開業届は、PCでダウンロードして記入すれば比較的スムーズに提出できる書類です。
郵送やオンラインでも提出が可能な書類なので、忘れずに提出して、そのメリットを十分に活かせるようにしてください。

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