美容室の独立開業にあたって何をすればいいのかって、わかりにくいですよね。出店までの手順・スケジュールはどんなものなのでしょう? 何からしたらいいのでしょう?
前準備、資金の調達方法や届出・手続きのコツ・ポイントをはじめ、美容室開業で失敗を避けて成功を手にする方法について徹底的に調査し、まとめました。
目次
美容室の開業手順完全ガイド ~準備編~
美容室の開業にあたっては、まず前準備が必要です。具体的に動き出したあとで「こんなはずではなかった」という状況に陥らないように、準備をしっかり行いましょう。
市場調査をする
本格的に動き出す前に、まずは市場調査をします。市場調査とは、その業界が何がどのように売れているのかなどの動向を調べることを言います。
出店したい地域の競合・ライバルとなりうるお店について調べるのも大事ですが、そもそも美容業界自体の動向について知っておくのも非常に重要です。
たとえば、美容業界の競争は厳しさを増しています。毎年、多くのお店が廃業する一方でもっと多くのお店が開業しており、その数は年に廃業数およそ1万店に対し新規開店数およそ8千店とも言われます。
東京商工リサーチは2019年の美容業の倒産がこれまでの30年間で最多となったと発表しました。
東京商工リサーチのデータは2019年のものが最新です。コロナ禍のデータを反映した同様の調査の結果はまだ発表されていないことにも注意が必要です。
美容室の開業にはメリットもありますが、リスクもあります。開業にあたってまずリスクをしっかり踏まえることが、その後の経営を成功に導いてくれるでしょう。
こうした業界動向について、詳細はこちらの過去記事で解説しています。
物件を調達する
市場調査を経て開業を決め、出店する地域やコンセプトが決まったら、今度は物件の調達です。
物件を決めるときに最も大きな要素のひとつが、居抜き物件とスケルトン物件のどちらを使うかです。どちらにもメリットとデメリットがあり、資金面もサロンの雰囲気や機能面も大きく左右するので、よく比較検討して決めましょう。
居抜き物件とスケルトン物件の比較についてはこちらの過去記事で解説しています。
http://inuki.tokyo/2018/01/30/post-1515/
管理美容師の資格を取得する
美容室の開業では、二人以上で営業する場合(≒一人だけで営業するのでない限り)、美容師免許に加えて「管理美容師」の免許が必要になります。
管理美容師資格の取得条件は以下の2点です。
- 美容師免許を取得してから3年以上の実務経験がある
- それぞれの都道府県で行われている講習会を修了している
取得条件に定められている講習会の開催は年に2回のみで都道府県によりバラバラです。早い時点でしっかり日程を調べて参加し、開店までに免許を取得できるようにしておきましょう。
財団法人理容師美容師試験研修センター | 管理理容師・管理美容師講習会 http://www.sb.rbc.or.jp/workshop/index.html
働いているサロンに独立する旨の報告をする
準備段階のうちに、働いているサロンに独立する旨を報告するようにします。お世話になったお店の人たちに感謝の気持ちを伝え、悪い印象を残さないようにしましょう。
美容業は接客業でもあるので、人からの印象や信用は大事です。これからお客様になってくれる人たちに悪い噂が伝わってもいけません。関わった人たちに良い印象を残し、時間的余裕を持ってできるだけ迷惑をかけずに去ることを心がけましょう。
美容室の開業手順完全ガイド ~資金調達編~
前準備を終えたら、まずは資金調達に入ります。だんだんと事業計画が具体化していくプロセスです。
開業に必要な資金を割り出す
開業したいサロンを実現するには何にどれくらいのお金がかかるのかを割り出します。
開業資金には2種類あり、開業までにかかる「設備資金」と、開業後に定期支払いや都度の支払いが発生するような「運転資金(いわゆるランニングコスト)」に分かれます。
運転資金にはサロンの月々の家賃、人件費、消耗品費、水道光熱費など多くのものが含まれます。
運転資金のことが頭から抜け落ち、あとから資金がかさんできてしまう人もいます。運営にあたってかかりうる費用をもれなく数え上げるようにしましょう。
融資のための審査基準を満たせるよう準備する
資金が割り出せたら、融資の審査基準を満たせるように早めの準備にとりかかります。
自己資金を用意する
まずは自己資金を用意します。融資の審査に通るには、開業および当面の運転にかかる資金の3割から5割程度の自己資金を用意することが必要です。
たとえば900万円の資金が必要だとすると、最低、3割の内訳を占める300万円程度の自己資金が必要になります。
事業計画書(創業計画書)を作成する
自己資金の見通しが立ったら、事業計画書を作り始めます。事業計画書は、融資元に対して、融資を受ける事業者に資金の返済能力があることをアピールするための書類です。
全体として、「事業者はお金を貸すに値する信用の持てる人物だ」と伝わるように作ります。以下のようなことについて、根拠を示しながら伝えられるように書いていきます。
- 開業の理由
- 事業者(サロンを経営する人≒あなた)の経歴
- かかる資金とその調達方法
- 開業後の経営戦略やその実現の見込み
記入用の書式や記入例が以下のサイトから入手できます。早めに書式を確認して、何をどのように記入していくのかイメージをはっきりさせましょう。
各種書式ダウンロード|国民生活事業|日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
開業に便利なテンプレート集|サロン(美容室・理容室)開業支援-タカラベルモント
https://kaigyou.tb-net.jp/template/index.html
書き方について詳しくはこちらの過去記事で解説しています。
http://inuki.tokyo/2018/12/07/plansheet/
信用調査に通るように行動する
ほかの個人でのローンなどと同じで、その人が確実に返済してくれる人であるかを調べる信用調査の結果は非常に重要視されます。
クレジットカードを焦げつかせている、多額の借金がある、各種料金の滞納があるなどはマイナスポイントになります。普段から、借りたお金はきっちり返すように心がけて生活しましょう。
借り入れ先・資金調達先を探し、融資を申請する
主な資金調達先には、日本政策金融公庫、自治体の制度融資、助成金・補助金があります。
日本政策金融公庫
上記の中で美容室の開業にもっとも多く利用されているのが日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫の融資のうち、美容院の開業でよく使われるのが以下です。
- 新規開業資金
- 女性、若者/シニア起業家支援資金
- 生活衛生新企業育成資金
詳細は日本政策金融公庫のサイトの一覧でご確認ください。
融資制度一覧から探す|日本政策金融公庫 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/index.html
自治体の制度融資(中小企業融資)
自治体の制度融資は、各自治体が民間の金融機関等と協力して行う融資です。自治体側が借り入れの際の負担金の一部を負担したりすることで、融資を受ける側が融資を受けやすいようにサポートしてくれます。
制度の呼称や利用の条件はそれぞれの自治体で異なるので、開業予定の自治体のサイトなどで確認することが必要です。
助成金・補助金
助成金・補助金とは、国や地方公共団体から事業者に対して支給される、返済不要のお金のことです。美容業もこの助成金・補助金を受けることができます。
詳細は以下の過去記事で解説しています。
http://inuki.tokyo/salon-kaigyo-hozyokin-zyoseikin/
その他:クラウドファンディング
最近出てきた飛び道具的な資金調達方法がクラウドファンディングです。
クラウドファンディングとは、一般から募った寄付を資金として事業を行う資金調達法のことです。
クラウドファンディングのプラットフォームとして代表的なものに、CAMPFIREとREADYFORがあります。
クラウドファンディング – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
https://camp-fire.jp/クラウドファンディング – READYFOR (レディーフォー)
https://readyfor.jp/
クラウドファンディングにはほかの資金調達方法にはないメリットもありますがデメリットもあり、情報を集めるハードルも高いので、基本的には上の項で紹介した普通の融資を受けることがおすすめです。
クラウドファンディングに挑戦する場合は、しっかりと下調べをして他の方法と比較してから慎重に行いましょう。
美容室の開業手順完全ガイド ~内装工事編~
物件が決まり、資金調達のめども立ったら、いよいよ内装工事です。
ここでは内装工事の手順について説明しますが、必ず内装工事前に取りかかるべき手続き(保健所と消防署に関するもの)もあります。工事前に取りかかる手続きについては次の項「美容室の開業手順完全ガイド ~開業手続き編~」をご参照ください。
内装デザインを決定する
まず内装デザインを決定します。内装デザインの決定方法についてはこちらの過去記事で詳しく解説しています。
http://inuki.tokyo/salon-naiso/design
複数の内装業者に見積もりしてもらう(相見積もり)
内装デザインが決まったら、必ず複数の内装業者に相見積もりをしてもらいましょう。
相見積もりをとると、実際の相場や、いつ何をするのかといったスケジュール感を掴むこともできます。
相見積もりをとるのにおすすめなのが「美容室の内装会社ナビ」。
美容室の内装会社ナビは、業界初の、美容室に特化した内装会社マッチングサービスです。厳選された内装施工業者さまから、無料で一括の相見積もりをとることができます。ページ下部のフォームから手軽に見積もり依頼を出すことができます。
水回りや照明の工事をする
いよいよ実際の工事に入ります。まずは配管や配線をする基礎的な工事から行います。
ここはあとからやり直しがききにくいところであるだけでなく、美容室の運営にあたっての法的なところ(消防法や衛生法など)にも関わってくるところです。
違法だったり危険だったりするお店になってしまわないよう、必ず工事着手前に念入りな確認をし、消防署と保健所のへの事前相談を済ませておきましょう。
フロア、天井、壁の工事をする
基礎的な工事が終わったらお客様の目に見える範囲の工事にかかります。フロアや天井を張り、壁の塗装やクロスの張り込みを行います。ここまで来たらあとは完成までもう少し。
エアコンやシャンプー台の取り付けをする
最後に機器の搬入と取り付けを行います。エアコンやシャンプー台を取り付け、キャビネットなどの什器も設置します。これでお店は完成です!
美容室の開業手順完全ガイド ~開業手続き編~
多くの人が難しさを感じる手続き面のことについて解説します。
開業までの手続きの流れ・スケジュールを理解する
まずは開業までの手続きの流れ・スケジュールをおおまかに把握しておきましょう。手続きには大きく分けて開業前に済ませるべきものと開業後すみやかに行うものがあります。
開業前なるべく早く(工事前から):
保健所、消防署
開業後すみやかに:
税務署、都道府県税事務所
保健所に事前相談→ 開設届など提出→ 検査を受ける
サロンに使う物件が決まり、内装業者から図面が示されたら、必ず着工する前の時点で保健所に事前相談に行きます。これは、物件の構造や設備自体が法的に美容室の運営基準を満たさない場合があるためです。
保健所に出す書類はたくさんあります。各種届出をすべて提出してから、初めて保健所による検査→受理→営業許可が出る→開店となります。
開店までに届出の提出から最低1週間から10日はかかります。書類を揃えること自体にも時間がかかりますし、提出すべき書類も複雑なので、早め早めに動きましょう。
保健所に出す書類は以下です。
- 美容所開設届
- 物件の位置を示した図
- 店舗の構造や設備を示した図(平面図)
- 従業員を雇う場合は従業員の名簿
- 健康診断書(発行から3ヶ月以内で、結核や皮膚疾患について記載されており、医師の発行するもの)
- 勤務する全員の美容師免許証
- 手数料(額は地域によって異なります)
- 開設者が外国人の場合は住民票の写し(国籍等を記載)
- 法人の場合は登記事項証明書(発行から6ヶ月以内のもの)
消防署に事前相談する→ 必要があれば届出
消防署への届出が必要かどうかは規定で決まっており、サロンの規模などの条件によって異なります。このためやはり着工前に事前相談が必要です。
相談をして届出が必要となった場合、着工の1週間前までに届出を済ませます。
改装して開業する場合、「防火対象物工事等計画届出書」を提出します。
改装せずに開業する場合、「防火対象物使用開始届出書」を提出します。
収容人数が30人を超える場合、防火管理者を置くことが必要で、その対応も必要です。
税務署に開業届などの届を提出する
開業に至ったら、すみやかに税務署に必要な届を提出します。届には提出が必須なものと場合により必要なものがあります。
以下に書いたもの以外に必要な書類が出てくることもあります。早めに税理士さんなどに相談したり、税務署に出向いたりして、ご自分のサロンではどの届の提出が必要なのかを確認しておきましょう。
提出が必須なもの
- 開業届(開業日から1ヶ月以内)
場合により提出が必要なもの
- 所得税の青色申告承認申請書(承認を受けたい年の3月15日まで)
- 青色事業専従者給与に関する届出書(承認を受けたい年の3月15日まで)
- 所得税の減価償却資産の償却方法の届出書・所得税の棚卸資産の評価方法の届出書(最初の確定申告書の提出期限まで)
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(開業後1ヶ月以内)
- 所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書(居住していない自治体にサロンの住所を置いており、その自治体で納税したい場合。随時)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(給与を支給する人員が常に10人未満の場合、随時)
都道府県税事務所に「事業開始等申告書」を提出する
開業後に提出が必要な税関連の届はまだあります。自治体の税事務所に対する、「事業開始等申告書」です。
自治体によって届の名称や提出期限は異なるので、自治体の税事務所に確認が必要です。東京都の場合は開業後15日以内の提出となっています。
法人を設立する・従業員を雇う場合
法人を設立したり従業員を雇ったりする場合、提出しなければならない書類が増え、手続きも複雑になってくるので、税理士、行政書士、司法書士などの専門家に書類作成を任せることを検討してみましょう。
専門家に任せてしまえば、慣れないことで心身を煩わせる必要もなく、書類や手続きの抜けも防げて安心です。
美容室開業のサポートやコンサルを受けるのはあり?
美容室開業にあたってサポートやコンサルを受けるのってどうなんだろう? とお思いの方もいるかもしれません。
サポートやコンサルを受けることは一つの選択肢としておすすめです。美容室開業は開業する側にとっては一生に何度もない経験ですが、開業支援を行う専門家は多数の事例を扱ってきており、知識やノウハウが豊富だからです。
開業のことは、開業の専門家へ。それが、美容室開業の失敗を減らし、成功を増やす重要なコツのひとつです。
無料の開業支援もあります。資金ゼロからでも相談するだけ相談してみるというのもよいでしょう。たとえばこのようなサービスがあります。
美容室・理容室の開業を徹底サポート|サロン開業支援 by タカラベルモント https://kaigyou.tb-net.jp/
抜かりのない準備でスムーズな開店を
美容室の開店までにはずいぶんと複雑な手続きが必要です。
一生に一度あるかどうかといった美容室の開業、慣れないことだらけですが、上手に情報や助けを手に入れながら乗り切りましょう。
この記事があなたの開店準備のために少しでもお役に立てたなら幸いです。